ダウンの応酬! アンソニー・ジョシュアvsウラジミール・クリチコ

共に2m近く、100kgを超える大型のヘビー級。
新しい時代をジョシュアが切り開くか、はたまたクリチコが壁として立ちはだかるのか。
若さvs経験の面白いマッチアップ。

序盤、クリチコはプレッシャーをかけて左手でジョシュアをコントロールし得意のワンツーを狙らう。プレッシャーのかけ方、左の使い方はジョシュアより一枚上手だそ。
ジョシュアはやややりにくそうに距離を測り、探り探りの立ち上がり。
しかしこの辺の上手さでもベテランのクリチコか上回る。綿密な計画の元、得意のワンツーを効果的に使用、合開始直後からやりたいことがはっきりしている。

4ラウンド直後距離を掴んだクリチコのワンツーがジョシュアの顔面を再三捉える。
5ラウンド流れを変えようとジョシュアが若さを発揮し一気にスタミナを使ってクリチコからダウンを奪う!流れを変える必要があると分かっていても5ラウンドでのこの攻撃はできるものではない。
スター性ではジョシュアが一枚上手だ。
しかし、クリチコもただでは転ばない。
隙きをついて左フックをジョシュアに叩き込み、動きの落ちたジョシュアに逆襲!一進一退の攻防を繰り広げる。

大人しく普通に戦えば距離を掴んだクリチコに分がある。6ラウンド得意のワンツーが強烈にヒット。ジョシュアからダウンを奪う。そこからジョシュアはダメージの回復に専念、クリーンヒットは避けつつなんとか凌ぎきった。

11ラウンド倒さないと勝てないジョシュアは意を決して最後のアタック!劇的な逆転勝利を手にし試合後フューリーへとの対戦をアピール。
ヘビー級の中心となった。

ダウンの応酬! アンソニー・ジョシュアvsウラジミール・クリチコ

今週の試合まとめて

ショーン・ポーター vs アンドレ・ベルト

ポーターはメイウェザーを意識して戦うと言っていたが、いつものポーターだった。
圧倒的なフィジカルでベルトにボクシングをさせず、揉み合い力づくでロープまで押し込む。
インターバル中のコーナーでベルトは「どうしていいか分からない」と弱音を吐く。それほどフィジカルに差があった。

オスカー・バルデス vs ミゲール・マリアガ
マリアガはしっかり試合のための訓練をつんだ様子が伺え、脇を締めたパンチと固いガードでフッカー、バルデス対策。
バルデスはいつも通り自分のボクシングを押し付ける。
バルデスの攻撃は無酸素運動で断続的になりがちで次の攻撃の合間に休憩をはさむ、対するマリアガの攻撃は有酸素運動でマラソンの様に常にプレッシャーをかけられる。
一瞬の火力ではバルガスが大きく上回るがラウンドを通してみるとマリアガの攻勢が上回る。
3ラウンドくらいから分が悪いと感じたのかバルガスは足を使ったアウトボクシングに切り替え、要所要所でクリーンヒットを奪う方法に切り替える。
この辺はさすがだ。
マリアガは攻勢をかけるがパンチが当たらず、逆にクリーンヒットを奪われる。
手数のマリアガ、ヒットの印象ではバルガスといった所。
10ラウンドにはバルガスがダウンを奪う。
判定の結果を聞いて驚いたが、バルデスの勝ちでもいいがそんなに点差が開くような内容には見えなかった。

今週の試合まとめて

エギディギウス・カヴァリアウスカス vs ラメス・アガントン

今回はサウスポー。

いつも通り振り回すが体が全くブレない。
最初のダウンは相手の重心が前に移った所に打ち下ろしのショートパンチ、ダウンを奪ったパンチも再三に渡りタイミングを図っていた右のカウンター。
繰り出すパンチが全部重い。画面越しに威力が伝わってくるようで寒気がする。
今後も要注目の選手だ。

エギディギウス・カヴァリアウスカス vs ラメス・アガントン

スーパーライト級統一戦リッキー・バーンズ vs ジュリアス・インドンゴ

トロヤノフスキー相手にアップセットをお越し、王座獲得後すぐにイギリスで統一戦を行うジャニーマン、インドンゴ。
負けても負けても手厚い加護を受けるバーンズと違いどこで誰とでも戦い、常に背水の陣のインドンゴ。
ここは彼を全力応援。
https://m.youtube.com/watch?v=xLJJS1p33Fg

長身でリーチで大きく上回るインドンゴはスピードでもから圧倒的。
初回から軽快に飛ばし、バーンズに迫る!
バーンズは手堅い守備だが攻防分離してしているためインドンゴの速い攻撃に防戦を強いられる。

インドンゴはスピードもあり、パンチ力も感じさせるが攻撃が単発単調でバーンズの堅い守りを突破できないラウンドが続き疲れとともに少しづつバーンズに対応される。

バーンズはジャブ、右ストレートは真っ直ぐ伸びていて相手からは見え辛いと思うし、きちんと左もフォローしよく訓練されているが愚直で意外性はない。
プレッシャーが弱くてパワーもないのにこんな戦い方では率直に言ってつまらん。

全体的な印象はインドンゴが体格とスピードを活かして単調にバーンズをポイントアウトしたという感じ。

バーンズはもういいだろう。この実力で2階級獲ったんだ。もういいだろう。

今後、インドンゴはどんなキャリアになるのか注目したいと思います。

スーパーライト級統一戦リッキー・バーンズ vs ジュリアス・インドンゴ

ウクライナ人揃い踏み ワシル・ロマチェンコ vs ジェイソン・ソーサ

エリート、ロマチェンコと雑草ソーサの戦い。
下馬評は圧倒的にロマチェンコ有利。

ロマチェンコが5~60%程度からいつも通りのスロースタート、対するソーサは100%エンジン全開でスタートする。
しかし実力差は歴然で、ソーサはロマチェンコの動きに着いていくので手一杯、ロマチェンコが瞬間的にエンジンを踏み込むと一方的に撃ち込まれる。
気持ちはこもっているが如何ともしがたい実力差、特に機動力は同じスポーツとは思えないほど差がある。

いつも通りロマチェンコは軽めのパンチやフェイントでソーサの足を止め、ソーサのサイドへ回り込む。1、2ラウンドまではソーサも足を動かし左フックでサイドのポジションを奪われないように対策していたが、100%で動きつづけたため体力と集中力を徐々に消耗し、足が止まってしまった。
その後はロマチェンコのいつものパターンだ。
しかし最後まで気力が衰えることはなく、ボクサーとしての意地を見せた。
5ラウンドから滅多打ちに合いながらもセコンドに止められるまで徹底抗戦を貫く姿勢と気迫にとても心を打たれた。
どこぞのジャマイカ人とは大違い。

残念ながらロマチェンコはパンチがなく滅多打ちの割には倒すことが出来ない。
トップ中のトップレベルを相手にした時に致命的な弱点になるかもしれない、と思う内容だった。
破格のパンチのマイキー・ガルシアを相手に強気にアウトボクシングを選択しなければ危険そうに見えた。

アレクサンダー・ウシク vs マイケル・ハンター
エリートアマ同士の対決。
チャンピオン、ウシクはKOが多いが技巧派で連打型の倒屋だ。
挑戦者のハンターはプロデビューから全勝、ちらも技術もスピードもある優れた選手。

ウシクは様子見の序盤だが、スピードで勝るハンターが先手を取り挑戦者らしい立ち上がり。3ラウンドまでその展開が続いたが、4ラウンドからウシクが流れを変えるために手数を増やし打ち合いの展開へ。
パンチの打ち方、ポジショニングに無駄が無く効率で上回るウシクへ徐々に流れが傾き始める。2ラウンドほど続け完全にペースを握ったウシクは休みを挟みながら尚もペースを落とさず、ハンターを少しずつ弱らせる。
最終12ラウンドはストップが妥当なほど打ち込み弱らせたがアメリカ人のハンターに見方したレフェリーのせいで判定へ持ち込まれた。

欧州やソ連圏のエリート達は予備動作のないジャブで相手のバランスを崩し、脇を締めコンパクトにパンチを振り、回転が効く。相手との距離に合わせた腰の回転の微調整でインパクトの瞬間に腕が伸びきる。特に強打者はこれが上手い。爆発力はないが恐らく一番効率の良いボクシングで世界戦の長丁場に向いている。

アレクサンダー・グヴォツディク vs ユニエスキ・ゴンザレス
技巧派のグヴォツディクとパスカルと接戦を繰り広げたゴンザレスの戦い。

ゴンザレスが大ぶりの気迫のこもったパンチで迫るが、グヴォツディクは足を使いジャブを突き隙を窺う。
2ラウンドくらいから打ち合いに突入、効率で上回るグヴォツディクがすべての場面を制し、ノックアウト。
この階級はコバレフ、ベテルビエフ、グヴォツディク、ビボル旧ソ連勢が制圧した感じだ。
残るはスティーブンソンとアンドレ・ウォードのみ。

ウクライナ人揃い踏み ワシル・ロマチェンコ vs ジェイソン・ソーサ

ゲナンディ・ゴロフキン vs ダニエル・ジェイコブス

強打者対決、買った方がミドル級のNO.1だ。
下馬評では圧倒的ゴロフキン。
ジェイコブスの顎でさゴロフキンのパンチに耐えられないという予想が多い。

試合はお互いに慎重だが、ゴロフキンのほうがやや積極的に前へ出てプレッシャーをかける。
いつもより距離が遠い、いつもなら強引に突っ込むが今回は強打の相手、なかなか距離を詰められない。
ラウンドの終盤から右のボディーブローを使い、まずは下から崩そうという展開。
ジャブで右をセットアップするゴロフキンは距離が遠い分やりにくそうだ。

ジェイコブスはスピードで優位な分、横へ動きながらプレッシャーをかわし、待ちのボクシング。
ゴロフキンの侵入を簡単には許さない。
この日はスイッチしたり撹乱を試みるもゴロフキンは冷静でペースは乱れない。

4ランウドにゴロフキンはダウンを奪うもダメージは浅く、また慎重なゴロフキンは試合を急がなかった。

5ラウンドからゴロフキンがペースを上げ、それに合わせてジェイコブスもペースアップ、主導権争いが続く。

ゴロフキンは試合の終盤になっても主導権を奪えず、当たりはしないがジェイコブスの速い連打の印象もいい。
試合は判定までもつれ、僅差でゴロフキンの勝利。
しかしゴロフキンは初の世界戦判定を経験、連続KOも途切れた。

感想
ジェイコブスが時々打つボディーをゴロフキンは嫌がっているように見え、やっぱりゴロフキンの弱点は腹かな、と思わせる場面もあった。
技術的にはパンチを打つときに脇が開くため、振りが大きく接近戦でジェイコブスに先手を取られた、やはり密着しての接近戦は効果的なようだ。
特に今回のようにジャブが当たらないと右をセットアップできず崩しきれない。今回は対応されてしまった。

ジェイコブスはゴロフキン対策をしっかり準備して、ゴロフキンの得意な距離をフットワークと密着で殺した。ウォード仕込の揉み合いも披露し充実したってトレーニングを感じさせた。

ゲナンディ・ゴロフキン vs ダニエル・ジェイコブス

ローマン・ゴンザレス vs シーサケット・ソールビンサイ

シーサケットを知らない海外のメディアでは楽勝の空気が流れるが、尽く日本人を粉砕してきたシーサケットの恐ろしさを知っている日本のファンは不安でいっぱい。

並んだ印象は身長は互角、しかし厚みや幅、頭蓋骨の大きさはシーサケットが大きく見える。

ゴンザレスはいつも通りガードを上げて相手の出方を窺う。が、遠い間合いでのパンチの交換でパワーの差を感じる立ち上がり。
シーサケットはいつも通りワンツーで踏み込んで連打を狙う。ゴンザレスが重心を前に移したタイミングで左のアッバーを狙うなど効果的な動きでゴンザレスに思うようにさせない。

初回から試合は動く、シーサケットの右ボディーでダウンを奪われ、ゴンザレスが後退。

2回はシーサケットが圧力をかけて、ワンツーを上と下に打ち分け、相変わらずの奇声とパンチ力でゴンザレスを威圧。手数も出す。
ゴンザレスは下がりながらも隙きを覗い、右をクリーンヒット。手数でも負けていないが、やはり力で押し込まれる。
序盤まではシーサケットが4回戦の試合のようなペースと強打でゴンザレスの技を抑え込み、精確さをパワーで上回っていた。

5ラウンドから疲れ始めたシーサケットにゴンザレスが襲いかかる。しかし残念ながらフライ級までの決定力はない。
頑丈なシーサケットはゴンザレスのボディーパンチに悩まされながらも徹底抗戦、簡単にペースは奪わせない。

終盤戦でもシーサケットは力は無くなったが手数は落とさない、ゴンザレスの前進に相撲で対抗し簡単にペースを奪わせない。
ゴンザレスも勝利への執念を見せ、決死の攻撃を試みるも押し合いの強いシーサケットの組み付き、必死の反撃で攻勢ほどのダメージを与えられないまま最終ゴング。

判定は2-0でシーサケットを支持。

動きの多い、面白い試合で判定とはいえアメリカのファンは大満足じゃなかろうか、日本人選手の多い階級だけに今後海外で活躍する選手が増えるかもしれない。

シーサケットは強めに振ってくる割には脇は締まってるし、ワンツーの踏み込み、連打の回転ら速いし打たれ強いはで厄介極まりない。
デビューから連敗してよくここまでま這い上がって来たなあ。素直に強いと思えるし、井上はクアドラス、ゴンザレスよりシーサケットとやってほしい。
クアドラスは一度やられかけたシーサケットと戦えるか?

今回ゴンザレスはパワーの他にバッティングにも悩まされ、いつものスタイルでボクシングできなかった。シーサケットよりパワーのある
だろう井上とやるのもいいけど、フライ級戻ることも考えないといけないかもしれない。
接近してのコンビネーションやディフェンスは見事で芸術的。少し休んでもっと活躍してほしい。

ローマン・ゴンザレス vs シーサケット・ソールビンサイ

ファン・フランシスコ・エストラーダ vs アナー・サラス

ビッグファイトを求めてスーパーフライ級に上げたエストラーダの転級後2戦目。

相手はスピードがあり、強そうだったが2ラウンドの打ち合いでペースを奪うとそこから上下の打ち分けで徐々にダメージを与え、5ラウンドにボディーでノックアウト。

ガードを上げて相手のパンチを掻い潜りながら近づき接近戦で上下左右のパンチで組み立て、ボクシングの巧さをみせた。

ファン・フランシスコ・エストラーダ vs アナー・サラス

デビッド・レミュー vs カーティス・スティーブンス

ゴロフキンに負けた同士の対決。
お互いに強打でKO必至のサバイバルマッチ。
開始直後からレミューがパンチを振るい前進、スティーブンスはガードを上げ、足を止めて迎え撃つ。得意の左のカウンターを狙うもタイミングが合わずクリーンヒットを奪えない。
ガードの上から構わずねじ込んでくるレミューの攻撃に少しづつ削られる。

3ラウンドはスティーブンスは作戦変更ジャブを使い距離を取ろうとする。
しかし、ロープ際でカウンターを狙った所を相打ちでレミューの左がヒット、強烈な一撃で失神し暫く起き上がれなかった。

相変わらずの破壊力を見せたレミュー。
かなり魅力的だが再びゴロフキンと戦っても同じようにボクシングされるのが関の山だ。

狙うはカネロ?できれば今度ヌジカムに挑戦する噂のある村田とのどつき合いを見たいなあ。
レミューを力でねじ伏せられたら本物だ。

デビッド・レミュー vs カーティス・スティーブンス

ジャック・クルカイ vs ディミトリアス・アンドレイド

元王者アンドレイドがこの階級一番安全だと思われる相手をチョイス。
この階級では、まず王者以上であることが第一線で戦う条件だ。

僕の予想ではアンドレイドが難なく王座を奪うはずだったが…

並んでみると2階級くらいの体格差だ。

序盤は挑戦者のアンドレイドがジャブを起点に左右のフックを強振、王者のクルカイを脅かす。
クルカイは体格差に戸惑ったのか後手に回ることが多いが、アンドレイドの攻撃はしっかりとブロックとバックステップで威力を殺しチャンスを窺う。
少しなれてきたクルカイが速いワンツーでアンドレイドの懐に飛び込み相手の足を止め、そこから回転力のある連打。しかし精度が悪くヒットを奪えない。
アンドレイドはこのワンツーの反応が遅れがちで何度もクルカイの踏み込まれる。
それをいやがりジャブ、ストレートで距離を取る手段に出る。

終盤、アンドレイドは左右に動きながらヒットアンドアウェイに移行しスイッチも見せたり、接近戦で
クルカイは1ラウンドに4、5回ほど踏み込んで攻撃を試みるが距離を支配されペースを奪えず。
王座交代。アンドレイドが新チャンピオンに輝いた。

アンドレイドは幅のある戦い方をしたが一点突破するような決定力を欠き、いつもより疲れているように見えた。

ジャック・クルカイ vs ディミトリアス・アンドレイド